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映画「ホセ・ムヒカ」

映画「ホセ・ムヒカ」を観ました。

南米ウルグアイ第40代大統領、世界で最も貧しい大統領の映画は、深く心に迫る内容でした。
彼は、軍事政権が終わるまで13年近く監獄に収監されていました。
あまりのひどい拷問に、発狂寸前までになったムヒカは、深く自分の存在と対話することによって乗り越えました。

ムヒカの優しい目、笑顔はまるで地球の愛、その存在が多くの人の幸せを感じます。


2012年6月ブラジルのリオデジャネイロで行われた、国連の持続可能な開発会議での彼のスピーチをご紹介します。

―以下、少し長くなりますが、本からの抜粋です。-


 「会場にお越しの政府や代表者の皆さま。ありがとうございます。
ここに招待いただいたブラジルと、ディルマ・ルセフ大統領に感謝いたします。
私の前にここに立って演説した、快きプレゼンターのみなさまにも感謝いたします。国を代表するもの同士、人類が必要とする国同士の決議を議決しなければならない。その素直な志をここで表現しているのだと思います。しかし、頭に中にある厳しい疑問を声に出させてください。
午後からずっと話されていたことは、「持続可能な発展と世界の貧困を無くすこと」でした。私達の本音は何なのでしょうか。 現在の裕福な国々の発展と消費モデルを真似することでしょうか。
質問をさせてください。ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てば、この惑星はどうなるのでしょうか。息をするための酸素がどれくらい残るのでしょうか。同じ質問を別の言い方ですると、西洋の富裕社会が持つ傲慢な消費を、世界の70億~80億人の人達ができると思いますか?そんな原料が、この地球にあるのでしょうか。可能ですか。 それとも別の議論をしなければならないのでしょうか。
なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか。 マーケット経済の子供、資本主義の子供たち、つまり私たちが、間違いなくこの無限の消費と発展を求めるこの社会を作ってきたのです。マーケット経済がマーケット社会を作り、このグローバリゼーションが世界のあちこちまで原料を探し求める社会にしたのではないでしょうか。
私たちがグローバリゼーションをコントロールしていますか。グローバリゼーションが私たちをコントロールしているのではないでしょうか。
このような残酷な競争で成り立つ消費主義社会で、「みんなで世界を良くしていこう」といった共存共栄な議論はできるのでしょうか。どこまでが仲間で、どこからがライバルなのですか。このようなことを言うのは、このイベントの重要性を批判するためのものではありません。その逆です。我々の前に立つ巨大な危機問題は環境危機ではありません。政治的な危機問題なのです。現代に至っては、人類が作ったこの大きな勢力をコントロールしきれていません。逆に、人類がこの消費社会にコントロールされているのです。私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球へやってきたのです。
人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。ハイパー消費が世界を壊しているにも関わらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。消費が世界のモーターとなっている世界では、私たちは消費をひたすら早く、多くしなくてはなりません。
消費が止まれば経済が麻痺し、経済が麻痺すれば「不況のお化け」がみんなの前に現れるのです。このハイパー消費を続けるためには、商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。ということは、本当なら10万時間持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない・・・。私たちは、そんな社会にいるのです!
長く持つ電球はマーケットに良くないので、作ってはいけない。人がもっと働くため、もっと売るために「使い捨ての社会」を続けなければならないのです。悪循環の中にいることにお気づきでしょうか。
これは紛れもなく政治問題です。私たち首脳は、この問題を別の解決の道に導かなければなりません。石器時代に戻れとは言っていません。マーケットをまたコントロールしなければならないと言っているのです。私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。
昔の賢明な人々、エピクロス、セネカやアイマラ民族までこんなことを言っています。
「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」。
これはこの議論にとって文化的なキーポイントだと思います。私は国の代表者として、そういう気持ちでこの場に参加しています。
私のスピーチの中には耳が痛くなるような言葉が結構あると思います。しかし、みなさんには水源危機と環境危機が問題の源でないことをわかってほしいのです。根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです。そして、改めて見直さなければならないのは、私たちの生活スタイルだということ。
私は、環境資源に恵まれている小さな国の代表です。私の国には300万人ほどの国民しかいません。でも、私の国には、世界でもっとも美味しい1300万頭の牛がいます。ヤギも800万から1000万頭ほどいます。私の国は食べ物の輸出国です。こんなに小さい国なのに領土の90%が資源にあふれているのです。
私の同士である労働者たちは、8時間労働を成立させるために闘いました。そして今では、6時間労働を獲得した人もいます。しかしながら、6時間労働になった人たちは、別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。
なぜか?バイク、車などのローンを支払わなければならないからです。毎月2倍働き、ローンを支払っていたら、いつの間にか私のような老人になっているのです。私と同じく、幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます。そして、自分自身に質問を投げかけます。
これが人類の運命なのか・・・と。
私の言っていることはとてもシンプルなものですよ。
発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛を育むこと、人間関係を築くこと、子供を育てること、友達を持つこと、そして必要最低限の物を持つこと。発展は、これらをもたらすべきなのです。幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。環境のために闘うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素であることを覚えておかなくてはなりません。
ありがとうございました。 』

8分間のスピーチが終わると、静まり返っていた会場が湧き返った。耳を傾けていた聴衆が一斉に立ち上がり、演台に立つ男性に惜しみない喝采を送ったのだ。拍手は、当分の間、止むことがなかったという。
(「世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉」佐藤美由紀著 双葉社より抜粋)


「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」

この言葉は現代人への大事な本質的なメッセージです。

多くの人はお金の奴隷になっているのではないでしょうか。

バラバラ感ではない、世界中一つのいのちで助け合い、コロナの社会の状況であっても、それをも活かしていく時代を迎えているように感じています。





プロフィール

野村奈央

Author:野村奈央
1945年群馬県生まれ。玉川大学卒業後、野口整体の創始者、野口晴哉氏と出会い、最悪の健康状態から回復。以来、整体を研究、実践している。「整体ライフスクール」主宰、指導を続けている。現在は赤城山山麓に暮らし、無農薬の畑作りや深水法による稲作、ブナの植林など通じ環境問題にも取り組む。

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