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農業と未来の希望

整体ライフスクールに参加の、北杜市の佐藤法子さんから、
久しぶりに封書が届きました。
中には、愛農高校に通うお孫さんの意見発表が入っていました。

佐藤さんご夫妻は30数年前から、八ヶ岳で農地を開拓して、自然養鶏と有機農を行なってきました。
そして同時に、諸事情で親が育てられない何人もの子どもたちを里親として預かり、育てられてきました。

長い間にご苦労もあったようで、ご自身の体のことから15年ほど前に、整体のセミナーにいらっしゃいました。
いろいろな状況がありながらも、いつも自分のことより他の人のことを心配され、笑顔をかかさない立派なお人柄です。

今回の文章を読み、お孫さんの愛希君が大きく成長しているのを感じ、とても嬉しく思いました。
素晴らしい発表で、この時代の希望が見えます。
皆さんにご紹介します。

・・・・・・・・

<2020年7月3日 愛農高校校内意見発表より>

「だから僕は農業と生きていく」 
 佐藤愛希(あいき)くん   3年 (55期生)

「あなたは何のために生きていますか」。
そう聞かれたときみなさんはどう答えるだろうか。
僕はあの子のためとか好きな物のためではなく「誰か」のために生きたいと思う。それはいまこの発表を聞いてくれている一人ひとりに対してもそうであるし、今まで僕が出会った人やこれから先に出会う人、もちろん出会ったことや出会うことのない人も含まれる。そしてその実践の1つとして僕は農業があると思うのだ。

そもそも農業とは何なのかと考えてみた。祖父は農家で僕も小さいころからよく畑で遊んでいた。畑に行って野菜をとって、自分で植えたお米を炊いて、卵をとって料理をして、そうやって食べるのが当たり前だと思っていた。野菜も米も農薬や化学肥料を使わずに作っていたため、夏の田の除草はたいへんだったし、虫が食べて穴の開いたキャベツが普通だった。しかしそれが普通ではないと知ってから、僕にとっての農業ははっきりとしなくなった。

戦後の日本の農業は、食糧増産のため農薬や化学肥料をたくさん使い、少ない面積でより多くの作物を作ってきた。その時はそれでよかったかもしれないが、そこから現代へと続いていく中で少しずつゆがみが生まれている気がする。このゆがみの正体は、生産効率を最優先する近代農業のあり方だ。大きな規模で農薬や化学肥料をパンバン使い効率よく作られた作物は生産国から他国へと輸出される。日本はたくさんの食料を輸入しているが、すべて消費することができずまだ食べられるものまで捨てている。その陰で食べる物がなくて死んでいく人たちがたくさんいる。

この社会は何かがおかしい。食べ物は生きていくために必要だ。そして人には幸せに生きていく権利が保障されているはずだ。そのために必要な大前提である「すべての人が十分に食べることができる」という権利が守られていないこの社会は果たして続いていくのだろうか。

「効率化」には常に「分業化」がついてまわる。分業化とは一つの作業工程をみんなで分けることで効率をよくすることだ。しかしそこには大きな問題がある。人は自分が直接携わらないと、あるいは自分との関係が感じられないと、責任感を失ってしまうということだ。

たとえばスーパーでキュウリを買ったとしよう。そのキュウリは外国産で誰が作ったのか分からない。そしてそのキュウリが傷んでしまった。だから捨てた。しかしもしこのキュウリが隣に住む農家さんが育てたものだったらどうだろう。隣のあの人が育てたキュウリをいただいたのだから無駄にせず食べなければいけないという責任感は外国産のそれよりも大きく感じられるのではないだろうか。

そして分業化によって人は人を殺すこともできるのである。第二次世界大戦時に日本軍は捕虜を使って残虐な人体実験を行っていた。七三一部隊と呼ばれたその部隊でも分業化が行われていたそうだ。隊員たちは徹底的な分業によって人を殺すということをリアルに感じることなく人体実験を行っていたのだ。

このことは今の社会でも言える。世界にはいまも飢えで苦しむ人や非人道的な条件で働いている人が数えきれないほどいる。その人たちがその状況に置かれていることと自分たちの暮らしはつながっているかもしれないのに、分業化され分断された社会に生きる僕たちの多くはそのことを知らない。知らないからと言ってそれを続けるのはあまりにも無責任だ。

まず知り、そこから想像すべきだ。そしてそのことに気付いたのなら社会を変えようと行動するべきだ。自分からは見えない、だけど確実にいる誰かのことを考え、行動する、その手段が僕にとっての農業だ。農業とは、人と自然、人と人をつなぐものだ。

僕は農業で世界を救えると思っている。それは農薬や化学肥料を使わずにその土地特有の野菜や作物を育てる有機農業によってだ。農薬や化学肥料は人工物だから自然に還りにくい。その土地にあった作物を作るのは多様な種を残していくためである。そしてそうした農業を実践することは何より自分自身の誇りになると思うからだ。

もちろんいきなりは難しい。少しずつ少しずつでいい。有機農業を通じて、みんなが食べることができて幸せを感じられる世界に少しずつ近づけばいいと思う。さらにみんなが少しずつ違っていて、少し不便なくらいがちょうどいいと思う。そのぶん分かり合えるし、工夫できるからだ。そこに人の豊かさや素晴らしさがあると思う。そしてそういう社会が長く続いていくと思うのだ。

僕の小学校の時の夢はこうだ。「農家になってたくさんの人に僕の作った物を食べてもらうことです」。だけど今は違う。今の僕の夢は「見えない誰かのために生きたい」ということだ。だから僕は農業と生きていく。


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コメント

愛と希望に満ちた愛希君

 小学生のころから時々顔を見ていた、あの愛希君から「あなたは何のために生きていますか」と、問われているようです。育った環境・体感したことから、しっかり農業を捉え、世界観をもってこれからの自分の生き方を問い、「見えない誰かのために生きたい」と決めています。僕は農業で世界を救えると思っていると言う彼の姿は、気負うことなく、実に晴れやかに堂々としています。
このことをうかがった時には、もう嬉しくて嬉しくて電話の手が震えるほどの感激でした。
 3年間の愛農高校と寮生活で学んだことは大ききと思いますが、彼がここまで成長した土台には、家族の力がとても大きいのです。特に祖父母の佐藤さんの生き方を見て感じて育ってきたことで、今があると思います。
 以前、佐藤さんご夫妻の手当てに伺い、すっかり日が暮れてしまった折、休みで帰っていた愛希が、おにぎりとお茶を持って来てくれました。佐藤さんもこんなこと初めてですと驚いていました。疲れきったおじいちゃん、おばあちゃんの手当てをしていたことが、その時の彼の眼にはどう映ったのでしょうか。とても優しい気持ちになれ、忘れられないことで、今思い返すと涙がでます。
 彼のようなまっすぐな志を抱いた若者と共に、世の中を変えていけると思うとワクワクしてきます。希望が見えます。

No title

こんなにも真っ直ぐな姿勢で生きている高校生がいるなんて、驚きとともに心から感動しました。ご両親の佐藤さんご夫婦が、彼のことを本当に大切にしてこられ、大事なことをたくさん伝え、生き様でお伝えしてこられたんだなと、感じます。
彼の作るお野菜が、きっと世の中を変えていきますね!

No title

栗山さん、奈央先生のブログのことメールでお伝えくださりありがとうございました。
お孫さんのブログに掲載されていた「農業と未来の希望」を拝見いたしました。
佐藤さんのお顔が浮かびました。満面の笑みでした。
お孫さんの文章を拝見し、なんと素直で真っ直ぐなんだろう。と、感動し涙目になりました。
このような若者がいること、本当に希望そのものだと感じました。
そして、私も今まさに、希望を育てさせていただいているんだなと感じました。
それには、私が、中心で大自然・いのちのはたらきの中でドーンと腹と腰を据えて、
愉快に自由にみんなが幸せになる生き様をしているということです。
お孫さん文章を拝見出来てありがたかったです。

谷口奈緒子

No title

なんと清々しく、過去、現在、未来を、世界をしっかり見ている人でしょうか。

祖父母である佐藤さんたちの存在、里子さんたちとの関わり、愛農高校で学んだことが全て体に蓄えられて、行動に結びついているように思います。

奈央先生から整体ライフスクールで佐藤さんが学ばれたこと、栗山さんの愉気が世代を超えて、伝わっていることに感動します。

「見えない誰かのために生きたい」、と、決めた愛希さんに会ってみたい。すでに会っているような気もします。

手紙をシェアしてくださり、ありがとうございます。

No title

この令和の時代にこんなにも真っ直ぐな青年が存在するなんて、驚愕、感動、そして希望が漲ってきます!
きっと周囲の人たちから愛されて育ったのでしょうね、その愛をこれからは「見えない誰か」に返していく。まさにペイ・フォワード・ピース!
何だか元気が湧いてきます、ありがとう。

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プロフィール

野村奈央

Author:野村奈央
1945年群馬県生まれ。玉川大学卒業後、野口整体の創始者、野口晴哉氏と出会い、最悪の健康状態から回復。以来、整体を研究、実践している。「整体ライフスクール」主宰、指導を続けている。現在は赤城山山麓に暮らし、無農薬の畑作りや深水法による稲作、ブナの植林など通じ環境問題にも取り組む。

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